和邇のコート・ハウス建築記(3)

いよいよ土地も決まり、本格的に設計が始まりました。
お施主さんに気に入っていただいた中庭案をベースに、来る日も来る日もプランを練り直します。

 

必要な部屋は20畳ぐらいのリビング、寝室、犬をトリミングするためのドッグケア・ルームなど。
居室部分は、なるべく仕切りのないワンルームにというのがお施主さんの希望です。

 

中庭と同時に生まれたトンネルのような、あるいは細い路地裏のような空間に、私たちは魅力を感じていました。

古い街の路地裏を歩くと、人が思い思いの居場所を見つけ、半ば好き勝手に使っている光景を目にします。見た目は雑多ですが、楽しさと居心地の良さに満ちています。

この住まいも、そんな人間的で大らかな雰囲気にしたいと思いました。
あまりカチッと部屋の役割は決めず、今日はこのへんで昼寝をしよう、今日はこのへんでご飯を食べよう・・・そんな小さな居場所が連なる、街の路地裏のような住まいにしたいと考えたのです。

 

路地裏は細長く入り組んだ形も魅力のひとつ。初めは真四角だったプランが、スケッチを重ねるごとにうねり、路地裏のような姿に変わっていきます。

そうしてできた曲がり角に、あるいは突き当たりに、ちょっとした居場所が生まれます。

朝は窓辺のベンチで琵琶湖を眺め、テラスでコーヒーを飲み、昼はあたたかい中庭のそばで居眠りをし、夜は隅っこのソファで本を読む。

そうやってまるで街の中に暮らすように、季節や時間に合わせて好きな居場所を選び、気ままに過ごせる住まいを目指しました。

たくさんの検討とお施主さんとの打ち合わせを重ね、だんだん家のイメージが見えてきました。
しかし実際に建てるには構造的な合理性、作り方、そしてコストのことも考えなくてはいけません。
ぼんやりとした空間のイメージが、現実的な制約をクリアしながら、建築として形になっていきます。

次はそんな現実化への大きな一歩、構造設計者との打ち合わせです。