2020.02.29 和邇のコート・ハウス建築記(1) 私たちが設計し、現在工事中の「和邇のコート・ハウス」。少し時間をさかのぼって、これまでの家づくりの経緯をご紹介します。設計依頼を頂いたのは2019年4月。琵琶湖の近くに、二匹の大型犬と暮らす平屋が欲しい、というのがお施主さんの要望でした。敷地も未定でしたが、和邇(わに)というところに目星をつけた土地があるとのこと。一緒に見学に行きます。和邇は大津市の北部にあります。JR湖西線が南北に走り、京都や大阪への通勤もしやすく、琵琶湖と比良山に挟まれた風光明媚な街です。 これがその土地です。80坪ほど。惜しくも琵琶湖は見えませんが、北に比良山が見えます。南・東側には家が建っているので、北から採光をとるのが良さそうです。 東京に戻ってすぐ案をつくりました。比良山の見える広い庭があります。まるでドッグランのように、家と庭を縦横無尽に回遊できるイメージです。さっそくお施主さんにメールしたところ、「ご近所のことを考えると、大型犬を庭に出すのは抵抗がある」とのこと。 たしかに全身真っ黒な大型犬。慣れていない人には少し怖いかもしれません。本当はとても賢い犬種でおとなしいのですが。さらに「犬を遊ばせるなら庭ではなく、琵琶湖に連れて行けばいい」とのこと。たしかにその方が思いっきり走り回れます。 反省点をふまえ、中庭のある案を考えました。すこし変形プランですが・・・。調べていくうち、和邇では「比良おろし」という電車も止まるほどの強風が吹くことがわかりました。中庭なら強風から庭を守り、大型犬も気兼ねなく放せます。同時に、中庭を取り囲むトンネルのような空間が生まれました。これはこの家の特徴になるかもしれません。ふたたびお施主さんにメール。中庭のコンセプトを気に入っていただけたので、この方向で案を進めます。どんな家に住みたいですか?と聞かれても、言葉ではなかなか答えづらいもの。私たち設計者だってそうです。そんな時は私たちからどんどん具体的な案を出し、キャッチボールをしながら、住まいのかたちをお施主さんと一緒に考えていきます。 コンセプトが定まったところで、はやる気持ちをいったん抑え、関係法令やインフラの状況、市の条例などをチェックします。すると残念なことに、敷地のすぐ近くに「土砂災害警戒区域」があることがわかりました。大雨の際に土砂崩れの危険があるエリアです。今回はぎりぎりエリア外なので問題はありませんし、仮にエリア内であっても、必要な対処をすれば家を建てることはできます。しかしわずかでも一生の住まいが災害にあう可能性を考えると、あまり気持ちの良い話ではありません。お施主さんと相談し、結局土地選びは考え直すことになりました。ちなみにこのような情報は「ハザードマップ」といって、だいたいどの市町村でもHP等で公開されています。家づくりの際は一度確認されることをオススメします。いったんは後戻りすることになりましたが、土地選びからお手伝いできたことで、早い段階で今回のことに気づけたのは結果的には良かったと思います。とにかく新たな土地を求めて、再スタートです。 NextNext