和邇のコート・ハウス建築記(7)

2019年12月、いよいよ工事が始まりました。

まずは杭を打ちます。

詳しい方だと「木造平屋で杭が必要?」と思われるかもしれませんが、これは以前書いた擁壁が関係しています。

 

普通に建物をつくると、建物の重量が擁壁に伝わってしまいます。

しかしこの擁壁はつくられた時期がとても古く、役所にも当時の資料が残っていませんでした。どれぐらいの強度があるかもわからないので、建物の重量を伝えるのは危険です。

そこで地盤調査を行い、地下にある強い地盤まで杭を打って、擁壁に頼らず建物を支えることにしたのです。

これが鋼管杭です。先端に刃がついています。

鋼管杭をネジのように回しながら、ゆっくり地面に打ち込みます。

杭が打ち終わったら、今度は鉄筋を並べ、型枠を組んでいきます。
だんだん建物の形が見えてきました。

型枠にコンクリートを流し込み、固まったら型枠を外します。とても綺麗にコンクリートが打設できました。

給排水の配管です。実はこれにはちょっとした工夫がしてあります。

基礎にも色々ありますが、今回は「逆べた基礎」と呼ばれるものを採用しました。

「逆べた基礎」は、近年もっとも主流である「べた基礎」に比べて土を削る量が少ないため、コストダウンにつながります。
また床が空気ではなく、温度変化が少ない土に接するため、断熱の面でもメリットがあります。

そんな「逆べた基礎」最大の弱点は、床下のメンテナンスができないことです。
ひとたび床下に配管を埋めてしまえば、基礎を壊さないかぎり配管の掃除や交換ができません。

この弱点を克服するため、配管を基礎の上に置いているのです。

床の上に配管があったら生活の邪魔になるのでは?と思われるかもしれませんが、大丈夫。

造り付け家具の下に配管を隠すことで、生活の邪魔にならず、簡単にメンテナンスできるようにしているのです。
つまり、べた基礎と逆べた基礎の「いいとこ取り」をしている訳です。

木造建築は大切に手入れすれば長く使い続けることができますが、設備はどうしても古くなり傷んでしまいます。だからこそ設備機器や配管のメンテナンスのしやすさはとても大事です。これも長く愛着を持って住んでもらうための小さな工夫のひとつです。

建物を支える基礎が完成しました。次はいよいよ木造部分です。